脂肪酸組成とカポック
久しぶりにエコフィードネタです。飼料と脂肪酸組成についての話題ですが、あらためてこのブログを検索してみると脂肪酸組成のことをたくさん書いています。それだけエサと脂肪酸は切っても切り離せないものなのでご容赦を。
前から何回も書きましたが、豚(というか単胃動物=反芻をしない動物)の場合食べた脂がそのまま体の中性脂肪となります。ので、飼料の脂肪酸組成は非常に重要です。
ところが、飼料中の脂肪だけではなく、体内でも脂肪が合成されます。体内では
デンプン(炭水化物)
↓
グルコース
↓
パルミチン酸(C16:0)
↓
ステアリン酸(C18:0)
↓
オレイン酸(C18:1)
と合成が進みます。
つまり、食べ物から脂肪を摂取しなかった場合、中性脂肪の脂肪酸組成は上記の脂肪酸だけになるわけです。実際は飼料にリノール酸などの不飽和脂肪酸が含まれているため、中性脂肪にはリノール酸も含まれます。
逆に言うと、リノール酸は合成できないのでかならず食物から摂取する必要があるわけです。
脂肪酸のリノール酸比率が上がると、脂肪の融点が下がってきます。融点が低いほうが食べると口当たりがよく美味しいのですが、スライスしにくいなど取り扱いがしにくいため肉屋さんからは嫌われる傾向にあります。融点を上げるためには飼料からの脂肪の吸収や蓄積を防げばいいのですが、なかなかよい方法はありません。その代わりに使われるのが「カポック」という植物です。
カポックには環状脂肪酸であるシクロプロベノイ ド脂肪酸という物質が含まれています。これが非常に強力に代謝系に作用します。カポック油を飼料に0.1%程度添加すると上記の合成系のうちステアリン酸→オレイン酸の合成が阻害されます。その結果、ステアリン酸の割合が高い脂となります。
不飽和脂肪酸たるオレイン酸よりステアリン酸のほうが融点が高いため、ステアリン酸の比率が高まることにより脂肪の融点が上がります。(肉屋さんによると触ってわかるぐらいだそうです)脂肪酸の分析を行うと、カポックを使用していることは一発でわかります。
ただ、オレイン酸含量が高いことは食味の向上にも寄与するため、カポックを添加しすぎると逆に評価が下がってしまいます。このあたりが難しいところです。
ところで、私はサプリメントとか○○を食べると健康にみたいな話は嫌いなのですが、このカポックの驚くべき効果を知るにつけサプリメントでも効果があるものがあるかもしれないなと思うようになりました。なにせ食べ物に0.1%添加しただけで体の脂の質が変わってしまうわけですからすごい効果です。
もっとも、一番重要なのは食べ物のバランスですのでできていない人がサプリメントに頼っても意味はないと思いますが。いずれにせよ、食べ物って当たり前ですけど豚でも人でも体に対する影響が大きいです。人間も何を食べるかってことはもっと注意を払うべきなんでしょうね。
« 肥料登録の植害試験 | トップページ | パソコンの購入頻度 »
「食品リサイクル」カテゴリの記事
- ビール粕のリサイクル(2014.07.02)
- 一般貨物と産業廃棄物収集運搬業(2014.05.05)
- バイオガスプラントの見学(2013.09.08)
- 野菜くずのリサイクル(2013.05.25)
- 含水率のワナ(2013.03.01)
「エコフィード」カテゴリの記事
- 美味しい牛乳のためのエサ(2014.08.31)
- ビール粕のリサイクル(2014.07.02)
- リキッドフィードの保存性(2014.04.27)
- エコフィードによる特徴のある畜産物の生産(2014.02.23)
- 自給飼料と堆肥(2014.01.20)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
豚にカポック油を食べさせれば、豚脂の脂肪酸組成に影響するでしょう。
しかし、脂身が硬くなるのは、脂肪酸の融点だけでは説明できません。
カポック油のシクロプロペン脂肪酸が関与して、脂肪酸の重合あるいはリポたん白質の生成が考えられます。
シクロプロペン脂肪酸は生殖に悪影響し、かつ奇形ヒナを誕生します。
シクロプロペン脂肪酸は豚肉に移行蓄積します。その豚肉を女性が食べ続けた場合どうなるのかです。
投稿: | 2014年2月14日 (金) 18時49分